Special - 山口晃インタビュー

伝統的な大和絵の技法を見事に現代美術に盛り込みアート界に新しい風を吹き込むアーティスト、山口晃さん。
物事を深い視点から捉えた作品は、優れた描写力、構想力に富み、観る者を常に驚かせています。
活躍の幅は各メディアに広がり、今最も活躍する作家の一人です。

今回はFIFAワールドカップ・オフィシャルアートポスター制作エピソードを伺ってきました。
どんな質問にも快く楽しく答えてくださった山口さんの優しく温かな人柄と、ユーモア溢れる人柄が、
彼の創り出す作品にそのまま映し出されているようでした。

サッカーに対する思いや作品の意図について教えてください

……そんなにないんですね、実は(笑)。サッカーというものに縁遠い人間なものですから……。ただ、私のような大して興味はないけれど、ひょっとしたらサッカーって面白いものかも、くらい人に何か届けるんだったら、むしろ素人の気楽さで描いた方がいいかしら?と。やっぱりあぁいう催し(FIFA)はファンの人たちが大いに盛り上がりますよね。私はそれを見るとなんだか「ちえっ」って気持ちになるんですよ(笑)。もしかしたら私以外にもファンの熱気に疎外感を抱く人がいるかもしれないので、そんな層にもアピールできればと、全くそこら辺はお気楽にはやし立てる感じで入りました。
そこでまず浮かんだのが、ちょっと昔に見た真田十勇士の映画のワンシーン。あっ、じゃあ、十勇士と主人公で11人になるじゃないか、それでいこう、人名はダジャレで参ろうというのが浮かんだら、やってもいいですっていう話になりました。

描かれている人物は真田十勇士の登場人物なんですか?

いえ、十勇士ですとただでさえ知られていないので、そこは歴史上の名前のある人に広げて考えてみました。それでも、「鎮西八郎」など平家物語ではキャラが立っている方なんですけど、一般にはあまりアピールしないだろうなぁと思いながら、も、その辺は趣味に走らせてくださいということでやってしまいました(笑)。例えば、「アッと驚く球五郎」なんですけど、「アッと驚く為五郎」の「為」を蹴球の「球」にするように、とにかく全部に「球」を入れる。それから十勇士なので、1から11まで順番に入れていくというので、数字と「球」を縛りにして人物を描きました。「球三郎」なんかは割ときれいに決まったなぁと思っています。描く方よりも、キャラクターをひねり出す方に時間の大半を費やしました。分かった人が「クスリっ」としてくれればいいかなぁ、全くサッカーに興味がない人が「何これ?!」っていうので、ちょっと入口になってくれればいいかしらって。

すぐ描きあげられたと伺ったのですが

そうですね。ポーズは何枚かデッサンをとりましたけど。球三郎では蹴った後の小指の立て具合などですね、あと手首がピンと外側に反るとか。で、そういう感じのことは何回も描いてみました。顔に特にモデルはいませんが、普段街中で、こういう顔型や目鼻立ちがあるんだって、何か元になる形を覚えておくと、組み合わせでたくさんの顔相が生まれますので、そういう意味では普段から人の顔を見るようにしていますね。

なるほど。あの電柱は?

富士山と形がシンクロしているんですね。電柱というのは風景の悪役にされることが多いんですが、「景観破壊」と云った意味的なものの前に実像的なといいますか、物体として持っている力みたいなものに目がいくような、表し方はできないかと思って。どうしても本質に辿り着く前に、意味に足をからめとられることが多い。何かそのもの自体に到達するようなリテラシーがあると昨今いいのではと思っています。
私は電柱を美しいと思うんです、外観的によくないから外国のように地下に埋めようとよく言われますが。電線の張り具合とか本当に美しい。外国人がよしとしたものが「美」みたいなところが未だにあって、それは逆で、自分で美しいと思ったものをいかにちゃんと発信できるかどうか。文化のありようとしては、むしろ外国人が眉をひそめたところからが勝負のところがありまして、そう言った外国人を「そうだったんだっ!!いいじゃない!!」っていうのに持って行くのが醍醐味。そいう意味でいうと電柱は割とわかりやすい悪役かなぁというところがありますね。

真田十勇士:戦国時代末期から江戸時代初期にかけての武将・真田信繁(真田幸村)に仕えたとされる、10人の家臣のこと。伝承上の架空の人物と言えるが、歴史的な由来を持つ人物もある。

最後に…サッカーにまつわる思い出はありますか?

サッカーというと、僕にとっては、昔12チャンネルで土曜18時から放送されていたダイアモンドサッカーですね。ダラダラと1試合を映す面白くもなんともない番組で、視聴率もすごい低くって。当時は社会人サッカーぐらいしかなかったですから、ファンなんていなかったんですね。スタンドもガラガラで。でもあの日陰な感じに対する愛着はありました。個人の体験としては学校の授業でやったサッカーになっちゃうんですけど、あれはプレイヤーが皆、自分の知っている人間ですから観ていておもしろいんです。サッカーファンっていうのはプレイを観るのもあるけど、プレイヤーのキャラクターを追いかけるということも大きいと思うんですよ。もう少しプレイヤーのことが分かると僕ももっとサッカーが好きになるんでしょうね。ちゃんと選手の経歴や持ち味、評価について説明してもらうと、じゃぁ観てみようかなと思うんですけども、入口で躓いてるカンジです。ですから、サッカーっていうと身内がやっている面白い遊びというイメージをもっています。自分はやるとほぼメタメタな感じなので、やった思い出としては辛いものしかないですが(笑)。

  • 1969年

    東京都生まれ 桐生市育ち

  • 1994年

    東京芸術大学美術学部絵画科油画専攻卒業

  • 1996年

    東京芸術大学大学院美術研究科絵画専攻(油画)修士課程修了

展覧会(個展)
  • 2010年

    ミヅマアートギャラリー(東京)

  • 2008年

    「さて、大山崎 - 山口晃展」
    アサヒビール大山崎山荘美術館(京都)

  • 2007年

    「山口晃展 今度は武者絵だ!」
    練馬区立美術館(東京)

  • 「アートで候。会田誠 山口晃展」
    上野の森美術館(東京)

  • 2006年

    「ラグランジュポイント」
    ミヅマアートギャラリー(東京)

  • 「ラグランジュポイント」
    中京大学アートギャラリーC・スクエア(愛知)

  • 船場建築祭「北野家住宅X山口晃」(大阪)

  • 2005年

    「山口晃展」日本橋三越新館7Fギャラリー(東京)

  • 「おさらい」タカハシコレクション(東京)

  • 2004年

    「売らん哉」ミヅマアートギャラリー(東京)

  • 「山口晃 挿画〔菊燈台〕」ナディッフ(東京)

  • 2003年

    『「山口晃展」展』ミヅマアートギャラリー(東京)

  • 2002年

    「日清日露戦役擬畫」ナディッフ(東京)

  • 2001年

    「畫を描く歓び」ミヅマアートギャラリー(東京)

  • 2000年

    ミヅマアートギャラリー(東京)

  • 1999年

    「借景」ミヅマアートギャラリー(東京)

  • 1998年

    「イスのある茶室」ミヅマアートギャラリー(東京)